深掘り内容
記事の要点
配信元:RKB毎日放送(Yahoo!ニュース掲載、2026年6月30日17時47分配信)
福岡・博多名物の豚骨ラーメンには、独特の獣臭・発酵臭が強い「クサウマ系」と呼ばれるジャンルがある。九州産業大学の米満宗明教授(生命科学部)の研究グループが、県内のクサウマ系ラーメン店4店舗のスープをDNA解析したところ、全店舗のスープから共通して古細菌「スルフォホボコッカス」が検出された。
豚骨ラーメンのスープ作りには、毎日ゼロから炊く「取り切り」方式と、前日のスープに新しいスープを継ぎ足していく「呼び戻し」「継ぎ足し」方式がある。クサウマ系の多くは後者を採用しており、この継ぎ足しの過程でスープ内に紛れ込んだ古細菌が増殖・定着し、豚骨に付着したタンパク質を分解することで、あの独特な発酵臭が生まれるメカニズムが明らかになった。クサウマ系豚骨ラーメンは事実上の「発酵食品」だったということになる。
米満教授らはこの成果を学会発表や特許出願に繋げており、九州の食品メーカーと共同で特許取得・大量生産に向けて動いている。1〜2年後の商品化を目指しているという。
「スルフォホボコッカス」とは何か(裏取り)
記事中の「スルフォホボコッカス」(配信先によっては「スルフォボコッカス」と表記揺れあり)は、学名 Sulfophobococcus に対応するとみられる。
- 1997年、アイスランドの高温アルカリ性温泉から新種 Sulfophobococcus zilligii として初めて分離・命名された属。命名は超好熱性古細菌研究のパイオニア、ヴォルフラム・ツィリッヒ(Wolfram Zillig)への献名。
- 球状(コッカス)の細胞形態で直径3〜5μm、絶対嫌気性(酸素を嫌う)で、酵母エキスなどを発酵的に分解して生育する超好熱菌。
- 後年、下水汚泥の嫌気性消化槽(好熱条件下)からも同属菌が検出された報告があり、高温・嫌気的な環境に棲む点は、継ぎ足しながら長時間煮込まれる豚骨スープの環境と条件が近い。
裏取りできていない点:配信元によって「スルフォホボコッカス」(Yahoo!ニュース)と「スルフォボコッカス」(dmenuニュース、Infoseekニュース、エキサイトニュースなど)の表記揺れがある。どちらが教授発表の正式表記かは今回の調査で確認できていない。学名 Sulfophobococcus の自然な音写は「スルフォフォボコッカス」または「スルフォボコッカス」に近く、「スルフォホボコッカス」はやや不自然な表記に見える。
一般論(推測含む):「35億年以上前から存在する」は、古細菌(アーキア)という生物ドメイン全体が地球最古の生命系統の一つであるという一般的科学知見に基づく説明であり、この特定の菌株や Sulfophobococcus 属そのものの年代が直接測定されたわけではない。事実と一般論は区別して理解する必要がある。
関連の博多ラーメン文化コンテキスト
- 「呼び戻し」「継ぎ足し」は、開店以来一度もスープを空にせず、別鍋で炊いた新しいスープを毎日注ぎ足していく伝統的な製法。代表的な店として「駒屋」などが知られる。
- 「クサウマ」(臭いけど旨い)は博多っ子の間で使われるラーメン評の一ジャンルで、豚骨の獣臭・発酵香を個性・魅力として楽しむ食文化。今回の研究はその"クセ"に科学的裏付けを与えた形。